『がくえんゆーとぴあ まなびストレート』

すごい。
なにがすごいって『まなびストレート』がすごいのだ。
テレ東で日曜深夜に放送中のアニメなのだが。
これは面白い!
第一話が非常によく出来ていて、最終回かと思うような盛り上がりだったので、かえって二話以降は低調になるんじゃないかと心配だった。
が、本日、第二話を見て確信した。
これはすごいアニメだ!


今期はもう『まなびストレート』で決まりである。
いや、はやくも2007年のベストと言ってもいいかもしれない。
正直なところ見た目はよくある萌えアニメと思われるかも知れない。
しかし、これはそんな矮小な枠からは大きく逸脱した作品だ。


凝ったOP・ED、クオリティの高い作画、安定感とチャレンジ精神を兼ね備えたレイアウト、テンポと間の緩急が効いた演出、感動を誘う脚本、そしてかわいいキャラクターたちが伝える深いテーマ性!
「学校とは何か」という古典的かつ将来的な問題を今日的な感性で描き出している。


また、アニメ的な文脈で語るならば『まなびストレート』は「普通の人間には興味ない!」と涼宮ハルヒに切って捨てられた「普通の生徒」たちに手を差し伸べる物語である。
どちらを肯定するかと言えば、断然まなびなのである。


「まっすぐゴー!」がまなびの合い言葉なのだが、ともかくこの勢いで最終話まで駆け抜けて欲しい。

『王と鳥』

その後、前々から見たかった『王と鳥』を観に行った。
宮崎駿高畑勲をはじめ、日本のアニメにも多大な影響を与えた歴史的作品。
フランスのアニメ界の巨匠ポール・グリモー監督、『天井桟敷の人々』で知られるジャック・プレヴェール脚本。
初期型は『やぶにらみの暴君』のタイトルで知られ、『王と鳥』はその完成版といったところ。


いやー、噂にたがわずすごい作品でした。
ダイナミックかつ精密な王国の描写。
アニメの快感に満ちたキャラクターの動き。
王国の社会システムや階級構造まで伝える演出と脚本。
そしてエンターテインメント性とメッセージ性の両立。
さらに我々にとっては「お、これって『カリオストロの城』に出てきたやつじゃん。宮崎さん、まんま真似してたんだ」みたいなお楽しみもあり。
いやはや、いいものを観た。


ちなみに同時上映の短編「小さな兵士」、「避雷針泥棒」、「かかし」も良かった。
通常はこのどれか一本だけの上映で19:40の回だけ三本すべて上映なので注意。

『時をかける少女』

 朝イチでテアトル新宿細田守監督の『時をかける少女』を観に行きました。午前中だから空いてるだろうと思いきや、いやはや客席は8〜9割埋まってました。いくら事実上の都内単館上映だからといっても、これほどの客入りとは。公開から三週間も経ってるのだから、これこそ口コミの力では?
 そんなわけでアニメ版『時かけ』ですが……
 これは掛け値なしに素晴らしい!
 どれくらい素晴らしかったかと言うと、スタッフロールが流れても誰一人として席を立とうとしない。そしてスタッフロールが終わって客電が点いた時、場内が感嘆のため息に包まれたんですよ! 「はぁ〜♪」って!
 とにかく夏の空気、青春の輝き、恋の手触り、そういったものがフィルムから溢れだしてくる。笑って泣ける。感動できる。
 クライマックスの余韻を引き立てるようなじっくりとした長めのエピローグも私好みでした。そして真琴が全力疾走でカメラを追い越していくシーン、これが最高!
 私の迷友で細田守親衛隊隊員(自称)のタライふゆ君がwebアニメスタイルで「個々のキャラクターの一挙手一投足」が魅力、と書いていましたが、たしかにその通り。その一挙手一投足を見ているだけで楽しいんですよ。
 このライトノベル全盛の時代に筒井康隆の正統派ジュヴナイル小説がこんな形で再創造されるとは。この夏に、劇場で、この作品を観ることができてよかった。

スタジオジブリの新作は『ゲド戦記』

もう諸方面で話題に上がってますが、スタジオジブリの新作は宮崎駿氏の息子・宮崎吾朗氏の監督による『ゲド戦記』だそうです。
http://www.ghibli.jp/


このニュースで思うこと。
まずひとつは、高畑勲さんはもう監督やらないのかなということ。
ホーホケキョ となりの山田くん』が興行的に大失敗だったという話は良く聞くけど……。


それから宮崎駿さんは息子が監督をやることに反対したそうだけれど、じゃあ誰がこの企画にGOを出したのかなということ。
やっぱり鈴木敏夫プロデューサー?
スタジオジブリでは過去に、気鋭の若手にやらせるはずがなぜか降板して宮崎駿さんが監督したケースが少なくとも二回ある。
魔女の宅急便』と『ハウルの動く城』だ。
ハウル』は最初、細田守監督のはずだったというのは有名な話だけれど、実は『魔女の宅急便』も監督交代劇があった。
確か「ユリイカ増刊 宮崎駿特集」号の中でスタッフが語っていたので、ウワサとかそういう類の話じゃありません。
で、その結果として、インタビューでよく「引退」とか「リタイヤ」という言葉を口にしている宮崎さんがずっと一線で頑張っているのがジブリなわけで、先のことを考えるとあまりいい状況とは言えない(庵野秀明カントクは「ジブリじゃ下は育たない」って断言してたっけ)。
そういったことを考えると、あえて息子を起用したというのは、宮崎駿引退に向けての布石とも見えるわけです。
さすがの宮崎さんも、自分の息子が降板した後の監督なんて絶対引き受けないでしょう。
しかし正直なところ、この選択には一抹の不安があるよね。
だってプロフィールを見る限り、吾郎さんって映像作家としては素人、とまでは言わないにしてもキャリアはほとんど無いわけで。
アニメ「ブラックジャック」の監督をやっている手塚眞さんは学生時代から実写映画をやって、それなりに評価も受けていた人だから、おなじ二世と言っても相応の手順を踏んでるわけですよ。
しかも、題材があの『ゲド戦記』!
どう考えても一筋縄ではいかないよなあ。
意地悪な見方をすると、『指輪物語』『ナルニア国物語』の映画化の流れに便乗したようにも思えるけど。
まあ実際、作品が完成するのはかなり先の話だろうし、気長に期待しましょう。


それにしても。
あの高畑さんのキャリアの最後を飾る作品が『ホーホケキョ となりの山田くん』というのはちょっと寂しい気がするのだけれど。