K−1MAX

魔裟斗が決勝まで駒を進め、そして負けた。
日本のキックボクシングの歴史は対ムエタイの歴史である。
K−1も中量級に踏み出したからには、その流れを無視することはできない。
ムエタイは肘打ちや首相撲の攻防が多く、投げもほとんど容認されている。
K−1のルールではそれらが禁止されるため、ムエタイ勢はあまり勝てないと言われてきた。
しかし今回登場したプアカーオという選手はK−1ルールへの適性を持ったムエタイ選手だ。
彼は「ムエマラソン」王者という肩書きを持っているが、ムエマラソンとはムエタイのワン・デイ・トーナメント大会。
一日に三試合というような過酷なグランプリを、プアカーオはすでに経験していたわけだ。
また経験面だけではなく、「ムエマラソンで優勝できる」というその技術面こそがK−1ルールへの適性に他ならない。
世のイメージとは違い、通常のムエタイの試合はかなり判定決着が多い。
倒すためではなくポイント争いのためにガードの上からハイキックを打ち合うような攻防がよくある。
しかし一日で複数試合をこなさなくてはいけないムエマラソンでは、やはりKOでの短期決着を狙うため、ムエタイ選手も日頃の試合とは異なる戦い方をするのだという。
しつこい首相撲を避け、パンチとキックの打ち合いに臨むわけだ。
そうなるとK−1に近い形に洗練されていくことが想像される。
ムエタイという広大な裾野の、ムエマラソンという新機軸の頂点。
それがプアカーオだ。


魔裟斗も仕上がりは良かった。
クラウスとの四度目の対決は、内容的に完封だったのではないだろうか。
クラウスは魔裟斗の間合いに入っていくことができず、わずかだが力の差を感じさせた。
しかし両目を腫らすダメージを負ってしまったことが決勝での敗北に繋がった。
一方で小比類巻ははからずもプアカーオの優勝をアシストするような試合をやってしまった。
妙な比較になるが、今の小比類巻では魔裟斗には勝てないだろう。
つまり中量級の日本勢は魔裟斗に大きく水をあけられている。
今は魔裟斗ひとりの人気で持っているが、「その他大勢」の彼らが奮起しないといずれK−1MAXもダメになるだろう。